物流業界における2024年問題
ワークライフバランスを重視するため、労働時間の削減を目指す「働き方改革」は様々な企業で推進されています。業務特性上、長時間労働の傾向があった物流業界でも、その関連法が2024年4月1日に施行されます。
これは労働環境が改善されるメリットがある一方で、ドライバーの労働時間に「年間960時間」の上限が設けられる影響が大きいとされています。「運送会社の売上・利益減少」「ドライバーの収入減少・離職」「荷主側における運賃上昇」といった問題が生じる可能性があるからです。
2023年4月、時間外割増賃金率引上げ
上記に先駆け、2023年4月からは中小企業においても「月60時間」を超える時間外労働の割増賃金率が、25%から50%へ引き上げられます。
運送会社にとって割増賃金による人件費の増加に加えて、2024年の時間外労働規制により1日に運べる荷物の量が減る(収入が減少する)となると、経営を圧迫する可能性が出てくるのです。トラック運送事業の99.9%、トラックターミナル業は93.8%と、ほぼ中小企業が占めている状況では、より多くの影響があると予想されています。
2024問題の「具体的な影響」
①運送・物流会社の売上・利益減少
ドライバーの時間外労働時間に上限が設けられることは会社全体の業務量減少につながり、結果的に売上も減少する可能性があります。労働量の減少に伴い人件費は削減できるかもしれませんが、オフィスの賃料や減価償却費などの固定費は減少しないため、売上だけでなく利益も減ってしまう恐れがあります。
②ドライバーの収入減少
運送会社で働くドライバーは長時間労働の傾向にあるといわれています。そのため、時間外労働時間に上限が設けられることで、従来受け取っていた時間外手当がなくなり、収入が減少するドライバーは少なからず出てくる可能性があります。
③ 荷主が支払う運賃の上昇
会社やそこで働くドライバーは、売上や収入面で悪影響を受ける可能性があるため、「売上・収入の減少分を、運賃の増加でカバーしようとする動き」が想定されます。運送を依頼する荷主にとっては、物流にかけるコストが増加することとなってしまいます。
2024年問題の対応策は?
「物流業界の2024年問題」は、働き方改革を推進することであり、ひいては「従業員のため」の法施策です。
ドライバーの労働環境整備の視点から、働き方改革はあってしかるべきでしょう。しかしながら、働き方改革により労働時間を削減することで、ドライバーや事業者の収入減が生じるという新たな問題を抱えることになりそうです。
そもそも、働き方改革関連法は、働く人々が個々の事情に応じた「多様で柔軟な働き方」を実現することを目的としています。長時間労働を是正することによって、ワークライフバランスが改善し、誰でも仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上と労働力不足の減少に結びつける効果が期待されています。
会社全体の売上や利益を減らさないためには、より多くのドライバーを確保することが大切ですが、2024年に訪れる変化に対しては対応策を模索中である企業も多いかもしれません。働き手を確保するためには、「労働環境・条件の改善」や「働き方の柔軟性」などに取り組み、求職者が働きたいと思うような会社作りを行うことが効果的です。
また、マンパワーを補うために、ドライバー一人あたりの労働時間が減少しても、会社規模で同等の業務が維持できるような生産性向上の取組みが不可欠です。例えば車両管理システムを取り入れる等、テクノロジーを活用しデジタル化を推進することで、圧倒的に業務の効率化が図れます。
現状を把握したうえで課題を割り出し、労務管理や労働環境を見直すことで、働き方改革が推進できるようになるのではないでしょうか。
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